子どもが事故を起こした場合、子どもが賠償責任を負わないとされても、代わりに親が賠償責任を負います。
民法714条に規定があります。
ただし、親が監督義務を尽くしていたと反論できれば、親は賠償する必要がありません。
さる4月9日、子どもが起こした事故に関する親の責任をめぐり、注目すべき最高裁判決がありました。
「 道路に飛び出したサッカーボールを避けて転倒事故が起きた場合、ボールを蹴った子供の親は責任を負うべきか。 こうした点が争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は9日、『危険でない行為でたまたま人に損害を与えた場合、親に賠償責任はない』との初判断を示した。」(日本経済新聞2015年4月10日朝刊)
1審では1500万円、2審では1180万円の損害賠償が命じられましたが、最高裁で請求が棄却されました。
今回の最高裁判決を受けて、子どもが自転車事故を起こした場合でも、親の責任は否定される方向に向かうのでしょうか?
それは、違うと思います。
最高裁の事案は、放課後の校庭でフリーキックの練習をしていたところ、たまたまゴールを超え、さらに塀とネットも超えてしまい、たまたまバイクで通りかかった老人が避けようとして転倒した事故でした。
こうした事案にまで親に監督責任を負わせるのは、ちょっと酷ではないかというのが一般的な感覚といえます。
しかし、「自転車を走らせる」行為は、運転の仕方を誤れば歩行者を傷つけることがありうる、危険な行為です。
子どもが乱暴な運転をすれば、下手をすれば人が死ぬこともある。こうした事態は、親であれば容易に想像することができます。
ですから、親は、子どもに交通ルールを守るようにしつけをする必要があり、危険な運転をしていたら厳しく注意する義務があります。
自転車事故が起きたとき、交通ルールを無視しているケースが大半です。
そのときに、親が「子どもには、日頃から交通ルールを守って運転しなさいと言っていました。」と反論しても、裁判所は認めてくれないでしょう。
自転車の運転行為は危険を伴う行為である以上、事故が起きたときに監督義務を果たしたといえるケースは限られるのです。
このことは、今回の最高裁判決が出た後も、変わらないでしょう。