会社は、従業員が労働するに際し、生命・身体の安全を確保する義務があります。
これを、「安全配慮義務」といいます。
精神面での安全も対象です。最近では、うつ病による自殺で安全配慮義務違反を問われるケースが増えています。
これに関連するものとして、12月1日から、「ストレスチェック」制度が導入されます。
会社は、常時使用する労働者に対し、ストレスチェックを実施する義務を負います。
なお、従業員50人以下の会社では、努力義務です。
ストレスチェックの結果は、検査機関から従業員に直接伝えられます。
従業員が医師の面接指導を希望した場合には、会社はこれを実施する義務を負います。
このケースでは、本人が自発的に医師の面接を受けることから、改善効果が見込まれます。
反対に、従業員が医師の面接指導を希望しない場合は、どうでしょうか?
ストレスチェックの結果は、本人の同意がなければ、会社は知ることができません。
そこで、会社の対応としては、本人の同意を得て結果を把握し、医師の面接が必要な従業員には面接を促すことが考えられます。
では、従業員が同意してくれない場合、面接を促しても拒否した場合は、どうでしょうか?
その結果、従業員がうつ病にり患しても、会社が安全配慮義務を問われることはないでしょうか?
答えは、NOです。
平成26年3月24日の最高裁判決は、次のように判示します。
「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている・・・」
その理由として、メンタルヘルスの情報は人事考課などに影響し得るものであって、職場では知られることなく働こうとするものだ、と指摘しています。
そうだとすれば、
「ストレスチェックの結果を教えてくれなかった」
「面接指導を促したけど受けなかった」
との事実だけでは、会社は免責されないことになります。
上司が部下の過重労働を把握することは、きちんと労働時間の管理をしていれば可能なはずです。裁判所でも、そのように認定されやすいです。
ストレスチェックは、従業員のメンタルの異常発見の手助けにはなりますが、あくまでも、会社としては、従業員の日々の労働状況・環境を把握することが重要なのです。